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【お腹の脂肪吸引】お腹の手術を受けたことがある人の注意点

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帝王切開や盲腸、子宮筋腫などのお腹の手術をうけたことがある人が、お腹の脂肪吸引をうける場合は、前もって知っておくべき注意点があります。

 

今回は、腹部手術の既往がある人がお腹の脂肪吸引をうける時の注意点と、安全性の高い治療を受けるための対策を説明します。

 

お腹の手術をうけたことがある人が知っておくべき注意点

 

開腹手術や腹腔鏡手術の手術後、傷口が治っていくときに皮膚と腹腔(ふくくう)までの組織に癒着が起きることがあります。

 

お腹の皮膚から腹腔(内臓があるエリア)までは、皮膚→皮下組織(脂肪がある層)→筋膜(腹筋の表面にある硬い膜)→腹筋→腹膜(うすい膜)→腹腔の順になっています。

 

お腹の外科手術を受けたことで傷跡に癒着が起きると、下のイラストのように、癒着が起きている部分は瘢痕(はんこん)組織となり、周囲の組織とくらべると硬くなっています。

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癒着の程度が大きい場合は、下の画像のように傷跡周辺が内側に引っぱられてくぼむことがあります。

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癒着の度合いが大きければ大きいほど、お腹の脂肪吸引の手術操作によって内臓損傷がおきるリスクが高くなるといえます。内臓損傷は命にかかわる重大な医療事故です。

 

もちろん、そのようなことが起きないように執刀医は細心の注意を払って手術を進めますが、お腹に傷がない人に比べるとハイリスクな手術であることに違いはありません。

 

お腹の手術の既往がある人の脂肪吸引において内臓損傷のリスクが通常より高くなる理由を以下に示します。

  • 瘢痕組織周辺は硬くなっているので脂肪が吸いにくく、力を入れないと吸引ができない
  • その際、脂肪吸引で使う金属カニューレで誤って腹膜(ふくまく)を突き破ってしまうと、金属カニューレが腹腔(内臓があるエリア)内に達し、内臓を損傷させてしまうおそれがある

 

脂肪吸引の手術で使用する金属カニューレは先端が丸くなっていて、針のようなものではありません。画像は脂肪吸引で使うカニューレです。

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脂肪吸引の手術は、小さい傷口からカニューレを何千回とストロークさせて脂肪を吸引していきます。画像はお腹の脂肪吸引をしているところです。

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癒着が起きている部分を注意して手術を行っても、傷口からカニューレを何千回も出し入れしているうちに、silent rupture(気づかないうちに腹膜を突き破ってしまう)が起こる可能性も否定できません。

 

この、腹腔内穿孔(腹膜に穴をあけてしまうこと)こそが、お腹の手術を過去に受けたことがある人の脂肪吸引で絶対に避けないといけないリスクです。

 

ただし、腹腔内穿孔は、起きた場合は患者さんの命にかかわる重大事態ですが、高確率でおきる事故ではなく、レア中のレアなケースといえます。

 

腹部手術の既往のある方がお腹の脂肪吸引の相談に来られた場合は、絶対知っておくべき注意点として以下のことを僕は患者さんに説明しています。

  1. お腹に傷がない人より腹腔内穿孔が起きるリスクが高いこと
  2. 腹腔内穿孔は絶対に避けるべき医療事故であること
  3. だから通常のお腹の脂肪吸引の患者さんと同じような手術はできないこと
  4. 具体的には、安全性を考えて傷跡直下の脂肪はあまりとれないし、
  5. 傷跡周囲についている脂肪もしっかり取ってあげられないこと
  6. そのため、ほかの部分とのバランスをとるために、全体の吸引量も控えめにせざるを得ないこと
  7. それにより、お腹に手術跡がない患者さんに比べると治療効果が劣ることが予想されること
  8. 安全な範囲でできる限りのことはするけれど、脂肪吸引のモニター患者さんのような仕上がりにはなれないこと

 

マイナス的要素ばかりの説明ですが、手術を受けても治療効果がないわけではありません。ここで、お腹の手術をうけたことがある患者さんがモニターで受けた脂肪吸引前後の画像を紹介します。左が手術前、右が手術後です。

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解説しますと、

  • 傷跡の凹みの部分はほとんど吸引しませんでした
  • 凹みが目立たなくなるように、傷跡周囲のの部分を慎重に吸引してなだらかに見えるようにしました
  • くびれができると細く見えるので、くびれの部分はしっかり吸引しました
  • 下腹部とバランスが取れるように上腹部の吸引をおこないました

もっと細くできなかったのかというと、できたのかもしれません。しかし、腹部手術の既往がある患者さんの脂肪吸引は通常よりリスクが高いこともあり、安全性を確保した治療をするには僕の技術力ではこれが限界でした。

 

患者さんはというと、傷跡部分の陥没が目立たなくなったこと、細くなれたことからとても喜んでくださいました。

 

ここまでが、お腹の手術を受けたことがある人がお腹の脂肪吸引をうける時に知っておくべき注意点です。

 

安全性の高い治療を受けるための対策

 

ここでは、腹部手術の既往がある人がより安全にお腹の脂肪吸引をうけるために自分でできる対策について説明していきます。

 

便秘や腸内ガスによりお腹がはっていると、外科医は手術がやりにくく、悪条件の中で手術をすることになるので腹腔内穿孔のリスクが高くなるといえます。

 

そのため、手術当日は腸内をきれいな状態にしておくことが安全性の高い手術をうけることにつながります。具体的には以下の3点をおこなってください。

  1. 手術前日の寝る前に下剤を飲む
  2. 手術前日は軽いものをたべる
  3. 浣腸をする

 

手術前日の寝る前に下剤を飲む

 手術前日の就寝前に下剤を飲んでください。下剤を飲んでもすぐに便意をもよおすわけではありません。寝る前に飲んでおくと“起きたら出せる”状態になりやすいです。

 

下剤は市販では売っていないので、手術を受けるクリニックで処方してもらうか、普段から便秘気味でよく効く薬がわかっているのであれば、いつも飲んでいる薬を使っても構いません。

 

便はやわらかいほうが排便しやすいので、水分もいつもより多めにとるようにしてください。

 

手術前日は軽いものをたべる

 手術前日は消化に時間がかからない、胃腸の負担に軽いものを食べてください。よって、以下の条件に当てはまる食べ物は食べないようにしてください。

  • 食物繊維
  • 脂肪が多い料理
  • 辛い料理などの刺激の強い料理
  • 極端に冷たいもの

どういうものを食べたらいいかわからない方は、手術前日の夕食の食事は、おかゆ、または具の入っていないうどんにしてください。

 

浣腸をする

手術当日の朝に浣腸をすると、腸内にたまっていた便をだして腸をキレイにすることができます。

 

腸内に便がたまっていないと、腸内ガスも発生しにくくなるため、お腹がはりにくくなります。

 

手術の安全性を高められるだけでなく、浣腸で余分な便を排出させてお腹の張りをおさえておくことで、術後の痛みのある時期にお腹がはる不快感を感じなくて済むので、ダウンタイムを快適に過ごせるメリットもあります。

 

浣腸を使ったことがない人は1回の浣腸でうまくいかない可能性も高いので、1回30gの浣腸液による処置を2回行うのがいいと思います。浣腸液は薬局に買いに行かなくてもネット通販のアマゾンで買えます。

 

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浣腸をするとすぐにトイレに行きたくなりますが、なるべく我慢してから排便してください。

 

その後も何度かトイレに行きたくなるので、手術当日の朝に浣腸を行う場合はクリニックの予約時間を考えて、自宅を出る2時間以上前に処置をしたほうがいいと思います。

 

まとめ

 

以上、お腹の手術を受けたことがある人が脂肪吸引をうける時の注意点と安全性を高めるためにできることを説明させていただきました。参考にしてください。

 

なお、お腹に手術をうけたことがあるといっても、緊急手術なのか予定手術だったのか、どの部分の手術を受けたのか、お腹を縦に切ったのか横に切ったのか、など、人によって状況が違います。

 

また、お腹の手術をうけたあとの経過は問題なかったのか、なにか合併症が起きなかったのかなどの条件も加味して脂肪吸引の治療計画を立てる必要があります。

 

そのため、患部の診察と今までの治療経緯の問診は絶対に必要なことですから、カウンセリングで患部の診察と丁寧な問診をしてくれたクリニックの中から治療を任せるクリニックを選ぶようにしてください。

 

腹部手術の既往のある方がお腹の脂肪吸引をうけるときは他の方に比べて腹腔内穿孔が起きるリスクを知っておかないといけないといえますが、脂肪吸引の一般的なリスクについては過去記事にまとめてあるのでそちらも目を通しておいてください。

 

www.fujiikazuhisa.com

 

痛みや腫れなどのダウンタイムはお腹に傷がない方と変わらないことが多く、恐れる必要はないといえます。ダウンタイムについての過去記事はこちらです。

 

www.fujiikazuhisa.com

 

お腹の手術の既往がある人のお腹の脂肪吸引の手術を行うのは高い技術力がいるので、治療を引き受けてくれないクリニックも多く、『あぶないからやってはいけません』と説明したり、脂肪溶解注射や脂肪を凍らせて部分痩せをする治療をすすめる医師もいるようです。

 

脂肪溶解注射や脂肪を凍らせる機械を使った部分痩せの治療による効果は、脂肪吸引のの数十分の1のレベルにも達していないので満足できるレベルとは程遠いと思います。

 

お腹に手術歴のある人でも僕なら治療できますと約束はできないのですが、診察させていただいて治療可能と診断し、治療をお任せいただいた際は全力を尽くしますので、まずはご相談にお越しになってみてください。

 

治療費はタウン形成外科クリニックの場合、90万円~190万円(税別)となっております。下剤や浣腸などもクリニックで用意しており、自分で準備をすることなくすべてお任せいただけます。

 

カウンセリングも予約制となっており、ネット予約が可能です。お待ちしています。

www.keisei.ne.jp